- 愛を悼む歌
- おまえを
- 殺し続けて
- 赤いヘルメット
- 俺は釘を打つ
- 丘の上から哀しい歌が聞こえる
- ぐにゃりとした雨
- 炎
- ナンシー
- 紅葉坂
- 親不孝通り
- 真夜中の笑い声
- – – – – – – – – – –
- Bonus Track DeluxeEditionのみ収録
- 「吉野大作1966-1969」
- 夏の砂浜
- 雨の季節
- どこにあるのさ
- すいらんの唄
- 青い日々
- 絶望のブルース
- 喜劇の主人公
- 君の面影
- 消えた少女
- きのうの雨
このアルバムが発売された経緯は再発されたCDに詳細に記載されている。非常に興味深い内容で必読である。当時、このアルバムがどの程度、出回ったのかわからないが、きっと少数だったのだろう。そのようなアルバムが発売後40年という時間の審判を経て、再発売されると言うことは、内容が素晴らしいからという理由に尽きるだろう。
ライナーノーツに吉野大作氏が記述してあるとおり、このファーストアルバムの全曲CD化には難色を示していたようだ。本人の「含羞」が無くなるまで40年かかったとある。40年前の横浜ロックシーンの瞬間を、40年後の今、素晴らしい状態で聴けることは幸せなコトだ。
約10年後、同名異曲が作成される”愛を悼む歌”。フィードバックを含む不気味な長いイントロがアンダーグラウンドな空気を感じさせる。Bluesに影響された重いロックだ。フェイドアウトしてしまうギターソロをもっと聴いてみたい、と思うのは贅沢だろうか。ここで長いソロを聴かせてしまうとアルバムの中では浮いてしまうと判断したのか。
当時、歌を作るに時にビートルズは影響されなかった、とあるが、ジョン・レノンの影響は大きいのでは。とくに”おまえを”は「ジョンの魂」にあるようなシンプルで力強いバンドサウンドだ。しかし歌詞は一人称ではないけれども。
エレキギター1本での弾き語られる”殺し続けて”。当時の社会情勢を反映したであろう歌詞が、40年後の今では新鮮に響く。これこそ当時の瞬間の空気を切り取った曲である。
引き続き、ブレイク部分以外、アコースティックギターで弾き語りの”赤いヘルメット”。2000年代後半でのソロライブの雰囲気にとても近い曲だ。さすがに最近のライブでは演奏していないと思う。この曲もまた当時の空気をパックしたものだ。最後、声が裏返るのはご愛敬。
一転、バンドサウンドが再開の”俺は釘を打つ”。2trackのテープで録音されたとは思えないほど、迫力があり、またきれいにミキシングされている。1973年に発売されたメジャーアルバムの音と遜色がない。コンピレーションアルバム「1973-1980」の1曲目として選曲されるのは当然だろう。迫力のあるボーカルはこのアルバムでの聴きどころの一つだ。
ファルセットで歌われる”丘の上から哀しい歌が聞こえる”。ファルセットで歌われるのは彼の中でこの曲だけなのではないか。CD再発に当たって曲名が追加された。
ばららん ばららん という擬音?が印象的な”ぐにゃりとした雨”。フォークロックスタイルで、このアルバムの中ではひときわ渋い輝きを持った曲である。徐々に音量が大きくなっていくエンディングのギターリフも印象的だ。
The Bandのようなサウンドではあるが、しっかりと自分たちの音楽として消化していると感じる”炎”。とにかく朝山考氏のリードギターが素晴らしい。
カズーが鳴らされ、コミカルな雰囲気の中はじまる、”ナンシー”。しかし歌われる詞は全くコミカルではなく、自殺に関してのものだ。そんな中リードカズーが吹かれ、雰囲気が変わること無く曲は続く。
横浜へ桜木町からへバスに乗ると、語りの順番とは違うが雪見橋、花咲橋、紅葉坂、の横を通る。実際に吉野大作氏もバスに乗ってこの風景を見て、作った歌と言っている。当時と違い海を望むことが出来ない。こんなところにも40年前の時代を見つけることが出来る。
そして最後の曲、「親不孝通り」。横浜の曙町や日ノ出町を拠点として活動を行っていたとエッセイにあるので、舞台は伊勢佐木モールと鎌倉街道の間にある細い路地だろう。今も昔もここの場所は変わらない。
“真夜中の笑い声”はCD再発に当たって曲名が追加された
自主制作盤でファーストアルバム、しかも一晩で一発録音したとは思えない完成度だ。様々なアーティストの影響を隠すこと無く、自らが持つ少年の突き上げる衝動を見事に歌というカタチで現れている。今であれば「中二病」と軽い言葉でいなされてしまうかも知れない。いや、今でもそんな軽い言葉で吹き飛ばされるような衝動では無いだろう。
だからアルバムタイトルは「吉野大作の少年時代」しか当てはまらないのだ。
Bonus Trackについては、「ハイ・スクール・デイズ vol.1」「ハイ・スクール・デイズ vol.2」にて記したい。この2枚からの音源は収録時間の関係で一部「あの町の灯りが見えるまで」Bonus Trackに収録されている。「吉野大作1966-1969」が2枚のアルバムに別れて収録されてしまったことが、再発されたDeluxeEditionの唯一の難点である。CD2枚組にして、「吉野大作の少年時代」にまとめて欲しかった。
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